インプラント治療の適正価格情報
「安心第一とは分かっていてもムダな出費はしたくない」
インプラントにまつわる諸費用の適正価格がわかる情報をお届けします。
格安インプラントの危険性
インプラント治療が高額である一番の理由は、単純に「コストがかかる」ということです。以下に、コストがかかる理由とコストカットするリスクについて述べていきたいと思います。
コストのかかる理由.1
インプラント治療は「体内にインプラントを埋め込む」という、他の歯科治療とは全く異なるタイプの治療であり、外科手術を伴います。そのため、清潔な環境下で行い、できる限り感染を予防するということが最も重要なポイントとなります。
かつて、レーシック(視力矯正)手術で、感染対策を怠ったクリニックで集団感染が起きた事件がありました。手術現場での感染予防をないがしろにすると、このようなことがインプラント治療でも起こりかねません。そのためには、針、メス、手袋はもちろんのこと、その他の部分(バキュームや患者様にかぶせる布など)もできるだけ使い捨て(ディスポーザブル)のものにすることで、再利用をなくし感染のリスクを減らすことができます。
また、手術室の環境を整えるための設備投資にもコストがかかります。手術室を個室にしたり、空調を整えたりすることで、他の治療からの飛沫感染のリスクを低減させることができます。
格安インプラントを謳っているクリニックでは、このような感染予防に対する設備投資に関してコストカットを行っている可能性が非常に高く、インプラント手術後の感染は、インプラントと骨との結合を阻害するだけではなく、炎症があご骨や副鼻腔などにも波及することがあり大変危険です。滅菌・予防環境への配慮を行っている医院を選びましょう。
コストのかかる理由.2
インプラントには車と同様、軽自動車のようなものから高級外車まで国内外の様々なブランドが存在します。なぜ高額なインプラントを販売するメーカーがあるかというと、そのメーカーでは年々、製品開発を行い患者様にとってより生体親和性の高い(生体とのなじみが良い)インプラントやその他のパーツの研究や歯科医師への教育・啓蒙活動を行なっているため、その分販売価格が高くなってしまう傾向があります。しかしながら、これは裏を返せば、医療の進歩に対して真摯に向き合い、患者利益に貢献している優良企業とも言えます。
そのようなメーカーは継続してアフターケアがおこないやすいことや、長く生体内で機能するインプラントに万が一のトラブルがあっても多くの解決策を持っています。逆に、インプラント自体が安価なメーカーは製品の発展が望めないだけではなく、トラブル時の対応や数年先にそのメーカーが存在しているかは疑問です。口の中という生体で長く機能して欲しいと思うからこそ、安心・信頼できるメーカーを使用している歯科医院を選ぶ必要があります。
格安インプラントを行っている歯科医院では、この部分でかなりコストカットしている可能性が高いと言えます。特に近年では実績の少ない安価なインプラントが非常に多く出回っており(全て悪いというわけではありませんが)、日本では認可が下りていない製品を歯科医師が直接個人輸入しているケースもあるそうです。自分の体の中に埋め込み、長く使うものだからこそ、信頼のある製品を使っている歯科医院を選びましょう。
コストのかかる理由.3
インプラントの上部構造(歯の部分)の素材選びによっても、値段が大きく左右します。一般的に、インプラントの上部構造にはセラミックの素材を用い、近年ではジルコニアという高強度のセラミックスが主流となってきています。
しかし、この材料を扱う技工所も非常に多額の設備投資をしているため、技工料金も高額となります。前歯など、審美的に重要になる部位ではさらにそこから職人の手で、セラミックを盛り足して自然観を演出する必要があり、技術料も増大します。また、インプラントの本数が多い場合も、非常に高い技術とたくさんの専用パーツが必要となり費用が高額になってしまいます。
格安インプラント治療では、このような上部構造の素材やパーツをできるだけ安価な材料にすることで、価格を抑えています。しかしながら、口の中という過酷な環境で機能する歯の部分には十分な耐久性が求められ、安易に安い素材やパーツを使用することは、後々歯が欠けたりパーツの破損が起きたりして、かえって再度修理費や、最悪の場合、上部構造作り直しなど費用がかさむことも考えられます。
さらに、そのようなトラブルが起きた時、インプラントメーカーがすでに存在していなければ、最悪インプラントを撤去することになるかもしれません。部位やインプラントの本数に応じて、しっかりと最新の材料についての説明を行い、選択肢を提示してくれる医院を選びましょう。
最後に、直接コストとは関連しませんが、治療をおこなう歯科医師の技術やリスクマネジメントも非常に重要です。高い技術を持った歯科医師は、自己研鑽のために国内外の研修や学会に参加し、最新の治療法を習得しています。そのような歯科医師が、インプラント治療の価格競争に参入することは少ないと思います。
適正価格の根拠とは
- しっかりとした滅菌・感染予防への配慮や設備投資をおこなっている
- 信頼できるインプラントメーカーの製品を使用している
- 歯の部分に適切かつ最新の素材を使用している
- インプラント治療に関し、常に最新に治療法の研鑽を行っている
上記のポイントを満たす医院において、一番シンプルな奥歯一本のケースでの適正価格は約35~45万円位と言えるでしょう。うち、1/2以上がいわゆるインプラント体そのもの、その他パーツや上部構造の技工料金で、残りが滅菌環境への設備投資と術者の技術料やその他、医院の家賃・人件費などに充てられています。
価格に見合う診療の見極め方
以上のように、価格が安ければ良いという問題ではないことが少しご理解いただけたと思います。では、適正価格に見合う診療とはどのように見極めれば良いのでしょうか。